昨今、被害が急増するランサムウェア攻撃。2026年は、ランサムウェアなどサイバー攻撃に対する耐性を高め、安心してITを利用できるようにすることを重視する年にしていくために、講じるべき対策・具体的な運用方法について、前回から連載形式でお届けしています。
第2回は、一般権限から分離させた特権アカウントは、どう管理・運用すべきかについて解説します。
前回のコラムでは、ありがちな運用として、システムの管理作業を行う情報システム部員の普段使いのアカウントにシステム管理者権限(特権ID)を常時付与した状態になっているケースが多いこと、それが特権を常用していることにつながり、攻撃者に特権を奪取されるリスクを増大させている点を指摘、普段使いのアカウントと管理者権限は分離し、アカウント自体を分けて運用するべきと説明いたしました。
今回のコラムでは、分離した特権アカウントはどう管理し運用していくべきなのかについて解説します。
一つ目のポイントは、特権アカウントは、どういう単位で作成し、どういう形で管理していくのが良いかという点になります。
ID管理の原則として、利用者を特定できるようにするために個人ごとに作成し、アカウントを共有しないというルールが一般的であることから、一般権限と分離した特権アカウントも同様の考えに基づいて個人単位で作成すべきと考えがちですが、実は以下のような理由で管理の煩雑さやリスクが生じてしまうことがあります。
特権アカウントは、個人に割り当て個人に管理させるのではく、最小限の特権アカウントを組織で管理することが望ましいと考えます。
特権アカウントは、言い換えれば個人を識別するためのアカウントではなく、必要な権限が割り当てられたものという考え方となります。

業務に応じて必要な権限が割り当てられた共有型の特権アカウントを組織で管理する状態にすることで、実際のユーザーには、必要に応じて特権アカウントを貸し出す運用を行います。
前回のコラムでも解説した通り、ランサムウェア攻撃において攻撃者が特権アカウントの認証情報を奪取する手口の一つに、使用された際にコンピューターに残るキャッシュと呼ばれる痕跡を利用します。そのため、特権アカウントは利用する機会をなるべく最小化することが望ましいと考えられます。

具体的な運用例としては、利用用途や利用期間を申告させて、その期間に必要な特権アカウントを貸し出すといった方法が考えられます。貸し出した履歴を貸出簿として記録しておけば、アカウントが共有型であっても、どの期間は誰が利用していたのか個人の特定が可能です。

特権アカウントを必要に応じて貸しだす際、当然ながら、パスワードをユーザーに教えて利用することになりますが、返却後はパスワードの変更を行います。これは、貸し出したユーザーがその後も利用し続けられないようにする内部者の不正使用対策にもつながりますが、実はサイバー攻撃対策としても必要な対応となります。
なぜならば、繰り返しになりますが、攻撃者が特権アカウントの認証情報を奪取する手口には、使用した際コンピューターに残るキャッシュと呼ばれる痕跡を利用するケースがあります。
攻撃者はしばしば、マルウェア感染によってコンピューターの動作が不調になったと見せかけ、意図的に特権アカウントの利用を促すことを行う場合があります。しかし、パスワードの変更を行えばキャッシュを無効にすることができます(※)
※痕跡の種類によっては、パスワード変更処理で無効にならないものもございます。
以上、今回のコラムでは、ランサムウェア攻撃への耐性を高めるために特権アカウントの作成、運用の具体例をご説明しました。すでにご説明している通り、特権が必要な場合に限って貸し出し、使用後のパスワード変更などは、内部者の不正対策にもなりえますが、このような適正な特権アカウントの運用は、サイバー攻撃に対する耐性強化にもつながることから、総合的なリスク対策という観点でも効果が高いといえます。
尚、内部者の不正対策であれば上記のような運用をルールとして制定し、ルール違反に対する罰則等の規定を設けることである程度効果は期待できますが、サイバー攻撃者にルールは通用しないため、具体的な対策を以って実効的な仕組みにする必要がある点がポイントになってきます。
以上、次回は特権アカウントの認証について解説します。
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