企業のシステムにおけるデータベースの役割は、成形された情報を安全に保管し、必要に応じて効率的に抽出することです。そのため、多くの業務システムではデータの格納場所としてデータベースを採用しており、業務に関連する膨大な情報がデータベース内に格納されています。
したがって、データベース内の情報の機密性、完全性、可用性などが損なわれるようなセキュリティ侵害は、企業の重要なデータの漏洩や逸失につながる恐れが高く、データベースへのアクセスに関するログ・証跡管理はその早期発見のために重要です。
そこで本記事では、データベースのログ管理・証跡管理の具体的な対策や留意点をご紹介します。
前回の記事では、Windows、UNIXといったオペレーティングシステム(OS)のログ管理の固有の留意点やポイントを解説していますが、データベースはこれらOSとは異なる固有の留意点が存在します。
データベースのログ管理は、アプリケーションによるアクセスと、人によるアクセスの識別が困難である点がOSと決定的に異なる点です。業務システムで利用しているような本番環境のデータベースはアプリケーションによって頻繁にアクセスされますが、これらのアクセスと、人が何らかの意図をもってアクセスした情報との識別が困難なわけです。
多くのシステムでは、アプリケーションが動作する場合に、OSに対して人がログオンして行うような方法でコンピューターリソースを利用することはありません。
例えば、Windowsシステムであれば、人の操作時はID・パスワードを用いてログインし、デスクトップを介して操作をします。一方、アプリケーションの場合、このような「対話側ログオン」を伴わない「サービス」としてOSリソースを利用します。
そのため、出力されるログの内容から、人が明示的にログオンをして行った内容とアプリケーションがOSリソースを使用した内容は識別が容易です。
しかし、データベースの場合は、処理命令がアプリケーション・人のいずれであっても同じログインプロセスを経て、SQL文と呼ばれる同じ言語で処理されています。しかも、本番環境で動作しているような環境では、大量のトランザクションを処理することで大量のログを出力しますので、重要な情報が埋もれてしまう可能性があります。
OSの場合、現在流通しているような比較的新しいバージョンであれば、商用・OSSを含めほとんど標準で監査ログを取得する設定になっています。しかし、データベースでは最新のバージョンであっても標準で監査設定が有効になっていなかったり、最小限のログのみが取得される状態だったりしています。
そのため、導入時に要件として、どのようなログを取得しておくべきかを決めて、それを満たすデータベースの選定や導入時の設定を行わないと、あとから設定変更が必要になる場合があります。
これらの設定によっては、データベース自体のパフォーマンスに影響を及ぼすことから、システム全体のキャパシティープランの見直しが必要になってくることも想定されます。
データベースの監査機能はデータベースエンジンと比較し、その歴史が比較的浅いため、各社のデータベースの監査機能は、旧バージョンと新バージョンで大きく異なる場合があります。開発メーカーによっても監査機能は大きく異なるため、その出力内容・出力形式にも相違があります。
このような複雑なデータベースのログ管理・証跡管理のポイントは、何を目的としてログを集めるのかという点を明確にすることです。
目的を定めずにただ漫然とログを集めているだけでは、増大するログの保管場所を持て余すだけでなく、いざ調査を行う必要が発生した場合に、目的の情報が見つからないといった事態に陥りがちです。
アプリケーションのデバックを行うことが目的であれば、常にログを取得する必要はありません。テスト環境で監査設定を有効にしておき、処理に応じて発行されるSQL文を解析することで多くのケースは問題解決が可能です。
ユーザーが業務処理を正しく行っているかどうかを監査するためのログを取得するのであれば、アプリケーション側で実装することが望ましいと言えます。その理由は2つ挙げられます。
前述の通り、セキュリティを担保するためのログ管理については、①外部の攻撃者による不正アクセスの発見、②内部者の不正アクセスの発見 の2つのリスク要因に分けて整理してみましょう。
データベース側で受けた処理をログとして残す方法では、上記の通り、あらゆる処理に対して残すことになるため、社内のデータベース管理者の操作を記録しチェックするという目的の場合には、操作側の視点で記録を残すという選択もあります。
例えば、弊社の証跡監査ツールESS RECを利用すると、データベースの管理作業を行っているデスクトップ自体を録画します。また、データベース管理画面に表示されるSQL発行文もツールによっては検索対象として記録することが可能です。
このようにデータベース管理者によるマニュアル操作によって発生しかねないデータベースに格納された情報の不正な取り扱いを抑止・早期発見することは重要です。
弊社エンカレッジ・テクノロジでは、システム証跡監査ツールの「ESS REC」を開発・販売しています。ESS RECは、システムの特権アクセス時の操作と操作環境を克明に記録・監視するとともに、高いトレーサビリティを確保します。
おかげさまで様々な業種・業態にご採用いただいており、14年連続市場シェアNo.1(※)のデファクトスタンダードです。IT統制の強化や監査対応、システム操作のセキュリティ対策に課題をお持ちの方はぜひご検討ください。
※出典:内部脅威対策ソリューション市場の現状と将来展望 2023年度版【サイバーセキュリティソリューション市場19版目】デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社 及び同社における過去の調査結果